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丸太をダイコンのかつら剥きのように箸の厚さの単板(ベニヤ)に剥き、これを切って割箸に仕上げる機械生産だ。
こういう生産方式は昭和初頭から始まり、樹種は主としてアカマツであった。
そのなかで最初に大産地にのし上がったのが岡山である。
中国山系のアカマツ林は、極相林が、おそらくタタラ製鉄や製塩用の燃材として伐採されたために退化した二次林、あるいは人工林で、銘木も産するが建築には不適な材も多量に出る。
この低質丸太が箸材になるのだ。
しかし、岡山の機械化の規模は小さく、より大規模な工場生産方式を採用した北海道が、豊富な広葉樹材を利用して量産体制を整えると、トップの座はそちらに移る。
これは、高級品を除く割箸の主流が針葉樹の「杉箸」から広葉樹の「柳箸」に移ったことを意味する。
北海道は、数量ベースではおそらく国内産の約6割を占め、金額ベースでもトップの大産地である。
原木には直径14〜28センチの広葉樹材丸太が用いられる。
もっとも多いシナノキは、径24センチ以上は合板(いわゆる科ベニヤ)に使えるので、24〜28センチの部分は用途が競合するが、24センチ未満は割箸以外にはパルプ用しか使途がない。
そして合板用の原木価格は一立方メートル当たり2一万6千〜4万7千円、割箸用は2万7千円、パルプ用は8千円程度。
経済原則に従って落ち着くところに落ち着くわけだ。
合板用、建築・家具・器具材用の需要が乏しいシラカバやアスペンは、もっぱらパルプ用の上前をはねる形で箸材が調達される。
こういう事情だから、あるメーカーは「割箸産業はパルプエ業の寄生虫だ」と自己規定する。
少々卑屈な感じもするが、当を得ていると言えなくもない。
おまけに、小判・元禄の製品歩留りは50パーセント強で、残材のうち33パーセントはパルプ用に還流する。
両者の差約17パーセントがベニヤに剥くまえに丸太を煮沸し、半成品を乾燥するための燃材であり、煙突の下に貯まる灰は融雪剤として利用される。
ほとんど資源有効利用型産業のモデルと言えそうだ。
「それにしても」と、なおガンバる自然保護主義者がいる。
「割箸をやめたら、そのぶん伐木量が減るではないか」と。
そんなことにはなるまい。
量的にはごくわずかだが、より収益性の高い割箸用の需要がなくなれば、パルプ用により多くの木を供給しないと造材業者が減収になるからだ。
それにも増して重要なことは、人工林はもちろん、自然林であってもいったん人手がはいった森林を木材の給源として維持するには、木は適切な方法で伐採されなければならないという事実である。
こういう森林施業と木材利用技術についての基礎知識を欠く森林保護論は、まさに「わかっちゃいない」のであって、真に森林を保全するためには迷惑なのだ。
日本は、国内森林資源利用の「低開発国」である割箸の国内生産量については公式の統計がない。
林野庁林産課が調査は行なってきたが、そこには輸入品の仕上げ加工が重複集計され、実態を把握できないことがわかって公表をやめてしまった。
業界筋の推定では84年の約百40億膳をピークに以後は年々減産の傾向にあり、90年は百億膳をかなり割ったと見られる。
一方、輸入量は貿易統計によって正確な数字が把握されており、こちらは年々増え、89年、90年は約127億膳に達した。
90年の年間消費量は約220億膳、どうやらこれが天井と見られている。
乳児まで計算に入れて年間一人当たり約200膳である。
割箸のタイプ別の歩留まりとシェアから、原木一立方メートルで平均5万膳が生産されると算定できるので、220億膳に要する原木の量は44万立方メートルになる。
これは薪炭材と楕木を除くわが国の木材需要のほぼ0.4パーセントである。
44万立方メートルなら床面積213平方メートルの在来工法の木造住宅が1万8千6百戸建つという計算ができるが、これは数字遊びだ。
まあ、箸材原木から建築材に使えるものを丹念に選別し、あるいは集成材化やプラスチック強化をして適材適所を工夫すれば、数十戸なり数百戸の家を建てることができるかもしれない。
しかし、その坪当たり工費はきっと数千万円にもなってしまうだろう。
つまり、現実には一戸も建たない。
ところで、大産地の北海道では原木のシラカバの4割、アスペンのほとんど全量がソ連やカナダからの輸入材である。
少しまえに全国を対象に調査した林野庁の資料では、原木の約31パーセントが外材となっていた。
ということは、輸入原木からの国内生産と製品輸入を合わせると、約7割が外材依存というわけだ。
実は森林率(国土面積に対する森林面積の割合)63パーセントという、先進国のなかでは有数の森林国である日本は、木材供給の7割を輸入に頼る国であり、割箸もそれに見合っている。
国内生産だけで見れば、外材依存率は低いほうなのだ。
なぜ森林国で木が足りないかという疑問にきちんと答えるには、それだけで一巻の書を要するが、乱暴に整理してしまうと、日本の人工林はまだ樹齢が若いこと、高度経済成長に伴う山村構造の崩壊によって、若い人工林を育てるべき人がいなくなり、「山は緑だが荒れている」状況になっていること、その結果、国内森林資源の有効利用に関して、日本はいわば「低開発国」になってしまっていることが指摘できる。
たとえば間伐材。
日本の森林の4割を占める人工林は、そのまた4割の約400万ヘクタールが間伐期にあり、なかでも5年以内に緊急に一回目の間伐を要する林齢16〜30年のものが140万ヘクタールと見積もられている。
これに対して近年の年間間伐実績は30万ヘクタール前後、緊急に必要な部分をなんとか回れたかどうかという程度だ。
それに伐ることは伐っても利用率は約5割にすぎず、搬出の費用を上回る価格で引き取る需要が期待できないため、年間約200万立方メートル、割箸の全原木量の5倍近くが林地に放置される。
間伐材を利用して生産される割箸は、流通量の0.1パーセントにもはるかに及ばない微々たるものだ。
反面、輸入品との価格競争が厳しく、減産に追い込まれた北海道で、不振の元禄・小判とは逆に需要が拡大しているのが高級品のえぞ天削だが、その一部にはトドマツの低質ではない普通丸太が使われている。
伐期がきた人工林の木を伐っても需要が乏しく、まだしも箸材がもっともいい値をつけるからだ。
望ましいことではないが、これは割箸の問題ではなく、トータルな木材需給の構造を変えなければ解決しない。
熱帯林破壊と割箸は無関係である国内の製箸工場で熱帯木(南洋材)を見つけるのはむずかしい。
後述するアガチスやアロウカリアがごく少量、他用途から転用されることがないとは言いきれないが、あっても数字にならない程度のはずだ。
ならば製品輸入はどうか。
近年の相手国別輸入量の推移は熱帯圏ではインドネシアの急伸長が目立つ。
しかし、その原木は松脂採取のために植栽され、用済みになったメルクシマツである。
本来の熱帯木ではなく、放置すれば立ち枯れる使途のない木を利用し、伐採後には植林も行なっている。
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